台湾の半導体メーカーTSMCの熊本進出による日本の合弁会社の設立、ソフトバンクやデンソー、トヨタ自動車などの出資を受けて設立されたRapidusなど日本でのシリコンアイランド構想が加速しつつあります。
一方それらの事業所で働く人材の確保の問題が顕著になってきました。
日本人だけではカバーしきれない規模の事業ですが、日本の厳しい規制の中で優秀な人材の受け入れにブレーキがかかりがちであります。
熊本高専などの工業専門学校や、九州大学などの各大学で人材育成も並行して始まっていますが、国際的競争力を持つためには外国人人材の積極的な採用も必須であると思われます。
今回はそんな問題を解決してくれる期待が持てる入管法上の優遇措置「高度人材ポイント制」について解説します。
高度外国人材ポイント制とは?
受け入れる人材イメージ
「国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材」であり,「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされています。(平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書)
ポイント制とはどのようなものか
高度外国人材の活動内容は下記の3つに分類されています。
- 高度学術研究活動 高度専門職1号(イ)
- 高度専門・技術活動 高度専門職1号(ロ)
- 高度経営・管理活動 高度専門職1号(ハ)
それぞれの活動の特性に応じて「学歴」や「職歴」、「年収」などの項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が一定点数(70点)に達した場合に、出入国在留管理上の優遇措置を与える制度となっています。
どのような優遇措置が受けられるのか?
高度専門職1号の場合
- 複合的な在留活動の許容
- 在留期間「5年」の付与
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労
- 一定の条件の下での親の帯同
- 一定の条件の下での家事使用人の帯同
- 入国・在留手続の優先処理
「高度専門職2号」の場合
高度専門職2号は高度専門職1号で3年以上活動を行っていた方が対象になります。
そして2号になると…
- 「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
- 在留期間が無期限となる
- 上記3から6までの優遇措置が受けられる
といった優遇を受けることができます。
「永住要件が緩和、在留期間が無期限、家事使用人や親まで日本に呼び寄せることも可能」となる点は他の在留資格と比べても大きなメリットと言えるのではないでしょうか!
つまりどういう制度なのか?
ポイント制における評価項目と配点は法務省令で規定しています。
就労の在留資格に関する要件(在留資格該当性・上陸許可基準適合性)を満たす者の中から高度外国人材を認定する仕組みとし、在留資格「高度専門職」が付与されます。
つまり、前提として教授、研究、技術人文知識・国際業務や経営管理などのビザ要件を満たすことが必要で、その中から特に優秀な外国人の方を評価する制度といえます。
ポイントの計算方法は?
まず何がポイントになるかですが、外国人本人の希望する活動の特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」「年齢」をベースとして、ボーナスポイントとして「地位」や「保有資格」「研究成果」など様々な要素で構成されます。あまりにも範囲が広いため詳細は割愛いたします。(質問があればお問い合わせください)
ポイント計算表
ボーナスポイントの詳細については下記リンクを参照ください。
ポイント計算におけるボーナスポイントに関する資料 (引用:出入国在留管理庁HP)
審査の流れ
では、実際に高度専門職の在留資格を取得する場合の流れについて説明します。
まず、大きく分けて2つのケースに分かれます。
① 外国に住んでいる外国人を日本に呼ぶケース
② 既に別の在留資格で日本で活動しているケース
①の場合について簡単に説明します。
①窓口にて申請
まず管轄の地方出入国在留管理局の窓口での「高度専門職1号」(イ・ロ・ハのいずれか)に係る在留資格認定証明書交付申請を行います。
この手続きは申請する外国人を雇用する会社や機関など受入れ機関の方(職員等)が申請を行うことができます。
行おうとする活動に係る「ポイント計算表」と「ポイントを立証する資料」を提出し、高度外国人材の認定を申し出ます。
ポイント計算書の書式はこちらからダウンロードできます。
②出入国在留管理庁における審査
上陸条件への適合性の審査になりますが、この時に合わせてポイント計算も行われます。
③在留資格認定証明書交付
在留資格認定交付書が交付されたら本国の申請人に送付します。
申請人は在外公館にて査証手続きを経て日本に入国が可能となります。
以上、手続きの流れは他の在留資格とあまり変わりません。
ポイント計算についての疎明資料を集めることに時間がかかることもあるため、やはり計画的に準備を進めていきたいところです。
まとめ
今回は今後の高度人材の確保のための在留資格について説明しました。
通常の在留資格より優遇措置があり大変魅力的ですが、受入側の日本の審査体制や環境についてもまだまだ課題が残るようではあります。
世界最速レベルのグリーンカード(永住権)が取得できる可能性のある在留資格でもあり、私個人としては、活気ある日本の実現のためにもサポートしていきたいと考えています。