最終確認日:2026年10月20日
留学生を新卒として採用したいが、「ビザの手続きは何から始めればいいのか」「内定を出したあとに不許可になったらどうしよう」と不安に感じていませんか。
留学生が卒業後に日本の企業で働くには、多くの場合「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)への在留資格変更が必要です。申請は本人が行いますが、許可されるかどうかは、企業が用意する雇用条件や職務内容に大きく左右されます。本人の学歴・在留状況と、企業が示す職務内容・雇用条件の両方を確認して準備することが大切です。
この記事では、専門知識がない方でも迷わないように、採用前に確認すること、手続きの流れ、2026年に変わった最新のルールまでを順番に解説します。
1. 技人国ビザとは? 人事が最低限知っておくこと
技人国ビザは、日本で働く外国人の在留資格の中で、最も利用されているもののひとつです。専門的な知識・技術や外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする仕事が対象で、主な業務の例は次のとおりです。職種名だけで対象になるとは限らず、実際の業務で判断されます。
| 分類 | 主な業務の例 |
|---|---|
| 技術 | システムエンジニア、設計、開発など |
| 人文知識 | 経理、総務、企画、営業、マーケティングなど |
| 国際業務 | 通訳、翻訳、海外取引、語学指導、広報など |
技術・人文知識に当たる業務では、学歴や専攻と職務との関係が重要です。国際業務には別の実務経験要件や例外があるため、3分類をすべて同じ学歴要件で考えないようにしましょう。
2. 内定を出す前に確認したい4つのポイント
技人国ビザの要件は、大きく次の4点に整理できます。内定を出す前に、一度チェックしておくと安心です。
ポイント1:学歴と業務内容が関連しているか
技術・人文知識に当たる仕事では、大学・専門学校で学んだ内容と業務との関連を整理します。大学卒業者は関連性が柔軟に判断されます。専門学校卒業者は専門士・高度専門士等の要件と専攻との関連性の確認が必要ですが、外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定学科修了者などには柔軟な取扱いがあります。たとえば、経営学部卒の方を営業企画や経理で採用する場合は説明しやすい一方、専攻と関係のない業務では不許可になる可能性があります。
ポイント2:給与は日本人社員と同等以上か
日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と、同等額以上であることが必要です。外国人だから低くする、といった設定は認められません。
ポイント3:配属先が現場業務ばかりになっていないか
通訳・翻訳や企画などの職種名を付けても、実際には清掃、配膳、品出し等が主な仕事であれば、技人国で認められないことがあります。ホテルのフロントや営業も、担当する業務の内容を具体的に確認してください。
新卒入社後の研修で現場業務を経験させる企業は少なくありません。その場合は、研修の期間や位置づけ、その後の配属を雇用理由書などで具体的に説明できるようにしておきましょう。
ポイント4:企業の安定性・継続性があるか
申請する企業は、事業が適法に運営され、継続して給与を支払える状態であることが求められます。提出書類は、企業の規模や納税状況によって区分される「カテゴリー」で変わります。
| カテゴリー | 主な対象 |
|---|---|
| 1 | 上場企業など |
| 2 | 前年の源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業など |
| 3 | 前年の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出している企業(カテゴリー2を除く) |
| 4 | 上記以外(新設会社など) |
カテゴリーの数字が大きいほど、事業の安定性を示す資料を多く求められる傾向があります。この表は代表例の要約です。自社がどれに当たるかは、申請する手続きの公式提出書類一覧で確認してください。
なお、「留学」から技人国への変更では、日本の大学・大学院・短大の卒業(予定)者など、一定の場合にカテゴリー2と同様の書類省略を利用できる案内もあります。派遣雇用はこの省略の対象外です。会社の規模だけで必要書類を決めず、本人の学歴や申請形態も確認しましょう。
3. 2026年4月からの言語能力証明:対象と証明方法
2026年4月15日以降、カテゴリー3・4に該当する申請では追加書類が必要です。そのうち、主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合には、業務で使う言語についてCEFR B2相当の能力を示す資料が求められます。すべての技人国申請に一律でJLPT N2の取得を義務付ける制度ではありません。
対象となる業務と、日本語能力の示し方
公式案内では、翻訳・通訳、ホテルフロント等の接客を主に行う場合などが例示されています。職種名だけではなく、言語を用いる実際の業務と申請区分を確認します。
日本語については、JLPT N2以上やBJT400点以上のほか、日本の大学卒業、高等専門学校や専修学校の専門課程・専攻科の修了なども、B2相当とみなされる条件に含まれます。留学生の新卒採用では、試験の合格証だけでなく卒業・修了による証明が可能か確認しましょう。卒業見込みの段階で必要な資料や提出時期は、最新の提出書類一覧に従います。
人事担当者が確認すること
- 申請区分と、書類省略の対象に該当するか
- 主に言語能力を用いる業務か、業務で使う言語は何か
- 試験成績や卒業・修了等の、どの資料で説明するか
- カテゴリー3・4の追加書類(所属機関代表者の申告書等)をそろえたか
言語能力の証明ができても、その業務が技人国の対象になることや、許可が出ることが保証されるわけではありません。更新でも、転職や業務変更の有無などにより取扱いが異なるため、公式の案内を確認してください。
4. 採用から入社までのスケジュール
4月入社の留学生を採用する場合の、一般的な流れの目安です。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 内定前 | 専攻・職務内容・給与条件の整合性を確認する |
| 内定〜秋ごろ | 内定通知、雇用契約書(または労働条件通知書)の準備 |
| 12月1日〜1月末を目安 | 翌年4月入社に向けた在留資格変更許可申請。管轄局の案内と本人の在留期限を確認 |
| 審査中 | 追加書類の依頼に備える。希望する入社日までの完了が保証されるわけではない |
| 許可後 | 新しい在留カードを受け取り、内容を確認する |
| 入社 | 就労資格・在留期間を確認し、ハローワークへ外国人雇用状況を届け出る |
入管庁は、4月就労開始の変更申請について12月1日から1月末までの申請を案内しています。留学の期限が1月31日以前で、その後も留学活動を続ける場合には留学の更新が必要となるため、この期間の変更申請を一律に当てはめないでください。管轄局から別の案内がある場合はそちらに従います。窓口申請の審査終了通知が卒業前に届いても、原則として卒業証明書を受け取った後に、必要書類を持参して新しい在留カードを受け取ります。
外国人雇用状況の届出は、雇用保険の被保険者かどうかで方法・期限が異なります。雇入れ時は、被保険者の場合は原則翌月10日まで、被保険者でない場合は原則翌月末日までです。担当部署で届出方法を確認してください。
許可が出る前の働き方に注意
留学生が「留学」の在留資格のまま、内定先でフルタイムで働くことはできません。在学中のアルバイトは、資格外活動許可の範囲内(通常は週28時間以内。学校の長期休業中の取扱い等は別途確認)に限られます。さらに、留学生の包括的な資格外活動許可は教育機関に在籍している間に限り有効で、卒業していずれの教育機関にも在籍しなくなった後は、その許可のままアルバイトを続けることも認められません。「早く戦力になってほしいから」と、許可前に勤務時間を増やすと、本人にも企業にも大きなリスクになります。
5. 申請費用と審査期間の目安
在留資格変更許可の手数料は、2026年10月1日以降に受け付けた申請から、許可される在留期間に応じた金額に変わりました(技人国の代表的な在留期間を抜粋)。
| 許可される在留期間 | 窓口の手数料 | オンラインの支払合計(決済手数料込み) |
|---|---|---|
| 1年 | 33,000円 | 27,330円 |
| 3年 | 64,000円 | 56,550円 |
| 5年 | 75,000円 | 65,550円 |
10月1日より前に受け付けた申請は旧料金(一律6,000円、オンライン5,500円)でしたが、2026年10月1日以降に受け付けられる変更申請には改定後の料金が適用されます。オンライン欄には、国に納める手数料(1年27,000円・3年56,000円・5年65,000円)に決済手数料330円または550円を加えています。行政書士への依頼費用等は別です。手数料は許可される在留期間で決まるため、予算は幅をもたせて見積もっておくと安心です。
オンライン申請の手数料は、審査完了の連絡のあとにコンビニ決済または銀行決済で納付します。クレジットカード決済、QRコード決済、収入印紙は使えません。
申請内容や時期によって処理にかかる日数は異なります。追加資料の提出が必要になる場合もあるため、余裕をもったスケジュールを組むことが大切です。金額や納付方法は、出入国在留管理庁の案内で最新の情報をご確認ください。
6. 不許可になりやすいパターン
人事担当者が特に注意したいのは、次の3つです。
- 専攻と職務の不一致:配属予定の業務が、学んだ内容と結びつかない
- 現場業務が中心:専門性を要する業務ではなく、単純作業や接客が大半になっている
- 説明資料の不足:雇用理由書や職務内容の説明が抽象的で、審査官に伝わらない
職種名を整えるだけでなく、実際の担当業務、学歴・経験、雇用条件を具体的な資料で説明することが大切です。
7. 採用担当者のためのチェックリスト
□ 内定者の専攻と配属予定の業務は、関連している
□ 給与は、日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上である
□ 入社後の職務内容を、具体的に説明できる
□ 自社のカテゴリー(1〜4)を把握している
□ 言語能力証明の対象と、卒業・修了等による証明方法を確認した
□ 申請から入社までのスケジュールに余裕がある
□ 許可前に、資格外活動の範囲を超えて働かせていない
□ 入社後の外国人雇用状況の届出を把握している
まとめ
留学生の新卒採用では、「専攻と職務のつながり」「同等以上の給与」「事業の安定性」、対象となる場合の言語能力証明がポイントです。内定を出す前に確認しておけば、申請内容の不整合や準備不足を防ぎやすくなります。
自社の場合はどうなるのか、内定者の職務内容で申請が通りそうか、といった個別の判断は、状況によって結論が変わります。不安がある場合は、申請前に専門家へ相談することをおすすめします。
出典・参考
- 出入国在留管理庁:在留資格「技術・人文知識・国際業務」
- 出入国在留管理庁:技人国の在留資格の明確化等について
- 出入国在留管理庁:留学から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ
- 出入国在留管理庁:出入国審査・在留審査Q&A
- 出入国在留管理庁:オンライン申請における手数料額及び手数料納付方法について
- 厚生労働省:外国人雇用状況の届出について
※本記事は2026年10月20日時点の情報をもとにしています。制度は変更されることがあるため、申請の際は出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。
