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日本の製造業において、深刻化する人手不足を解消するための切り札として広く活用されている在留資格「特定技能」。以前は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」という3つの分野に分かれて個別に運用されていましたが、現在はこれらが統合・再編され、新たに「工業製品製造業分野(以下、工業製品製造分野)」として一本化されています。
「自社の製造業務は特定技能の対象になるのだろうか?」
「技能実習生から特定技能へスムーズに移行してもらうには、何を準備すればいい?」
このような疑問や不安をお持ちの人事・総務担当者様、経営者様に向けて、本記事では最新の法的根拠(運用要領や公式ガイドライン)に基づき、対象業務の見極め方や企業が満たすべき要件、具体的な手続きの流れを分かりやすく解説します。
現場のリアルな実務経験に基づいた「失敗しないためのプロの視点」も交えてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
従来の製造系3分野では、それぞれの分野ごとに従事できる業務(作業内容)が厳格に区別されていました。そのため、受け入れる企業側からは「自社の業務が複数の分野にまたがっていて、どちらの分野で申請すればいいか判断がつかない」「採用した外国人に、隣のラインの異なる作業を柔軟に手伝ってもらうことができない」といった使いづらさが指摘されていました。
これらを解消するために分野が統合され、同一の業務区分内であれば、より柔軟に幅広い製造作業に従事させることが可能になりました。これにより、マルチタスクをこなす日本人従業員と同様の柔軟な配置ができるようになり、現場の生産性向上や効率的な人員配置に大きく寄与しています。
一本化されたことで、在留資格申請や受入れ機関としての管理窓口、加入すべき組織などが綺麗に整理されました。また、この統合に合わせる形で、それまで特定技能の対象外であった「繊維工業」や「印刷・製本」「こん包」といった新たな製造業務も同じ分野へ追加・再編されており、製造業における外国人材活用の幅が大幅に拡大しています。
工業製品製造分野では、外国人が従事する業務が複数の「業務区分」として定められています。受入れを検討する際は、まず自社の作業がどの業務区分に該当するのかを正しく見極める必要があります。
1号特定技能外国人が従事できる業務区分と、それぞれの主な技能内容は以下の通りです。基本的には、指導者の指示を理解し、または自らの判断により、指定された製造工程の作業に従事する形となります。
| 業務区分 | 主な含まれる技能・作業内容(例) |
|---|---|
| 機械金属加工 | 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装、金属熱処理、強化プラスチック成形 |
| 電気電子機器組立て | 機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装、強化プラスチック成形 |
| 金属表面処理 | めっき、アルミニウム陽極酸化処理 |
| 紙器・段ボール箱製造 | 印刷箱打抜き、印刷箱製箱、貼箱製造、段ボール箱製造 |
| コンクリート製品製造 | コンクリート製品製造 |
| RPF製造 | 破砕・成形等のRPF製造作業 |
| 陶磁器製品製造 | 機械ろくろ成形、圧力鋳込み成形、バッド印刷等の陶磁器工業製品製造 |
| 印刷・製本 | オフセット印刷、グラビア印刷、製本 |
| 紡織製品製造 | 紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、カーペット製造 |
| 縫製 | 婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製 |
★ 行政書士の現場リアルアドバイス
機械部品の製造など、一見すると業務が非常によく似ている現場では、自社がどの業務区分を選択すべきか、書類作成時に迷いやすいのが実情です。そのため、上記の区分表や運用要領の細則をしっかりと確認しながら、実際の作業内容ごとに一つずつ慎重に検討していくことが極めて重要になります。また、法改正によって新たに追加・再編された業務内容についても、見落としがないよう最新の基準で確認していくことが大事です。
自社が受入れ対象になるかどうかは、単に「うちは製造業だから」という自己判断だけで進めることはできません。法的根拠として、受入れを行う「事業所(工場単位)」が、総務省の定める日本標準産業分類において、指定された産業中分類・小分類・細分類のいずれかを行っている必要があります。
さらに重要なのは、「直近1年間において、その対象産業に該当する製造品出荷額等(製造品出荷額、または加工賃収入額)が発生していること」が必須の要件となる点です。公式のFAQなどでも、該当性判断に関して以下のような細かい個別ケースが示されています。
このように、最終的に出荷する製品の形態や加工賃の性質、工場の主たる活動によって、産業分類の該当性が非常に細かく分かれます。この確認を怠ると、せっかくの申請が「対象外の事業所」として却下されるリスクがあります。
特定技能外国人は、基本的には上記の業務区分に定められた「主たる業務」に専ら従事する必要があります。日本人が通常行うような「関連業務」(例:原材料・部品の調達・搬送、前後工程の作業、クレーン・フォークリフトの運転、清掃・保守管理、梱包など)に付随的に従事することは認められています。
私どもが現場を見る中で最も注意していただきたいのは、「専ら、原材料の運搬だけをやらせる」「一日中、工場の清掃や完成品の梱包作業だけをさせる」といった配置は完全にNGという点です。これを行うと、在留資格の範囲を超えた活動となり、不法就労助長などの違法行為として企業側が重いペナルティ(今後の外国人受入れが数年間できなくなる等)を受けるリスクがあります。また、製造業においては「労働者派遣」での受入れは一切認められておらず、直接雇用のみとなる点も絶対に忘れてはならないルールです。
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外国人を特定技能として受け入れる企業(特定技能所属機関)には、法律および法務省令で定められた厳しい基準が課されます。
工業製品製造分野で外国人を雇用する場合、最も注意しなければならないのが「一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)」への加入(賛助会員登録)です。
以前は「製造業特定技能協議会」という国の組織が直接窓口でしたが、現在は経済産業大臣の登録を受けた登録法人として「JAIM」が設立され、業務を引き継いでいます。地方出入国在留管理局へのビザ申請前に、このJAIMの構成員となり、その行動規範を遵守することが義務付けられています。
JAIMへの加入にかかる年会費(年額)は、以下の通り明確に定められています。
| 企業の規模 | ① 正会員団体に所属する場合 | ② 正会員団体に未所属の場合 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 60,000円 | 63,000円 |
| 大企業 | 80,000円 | 83,000円 |
※初年度は入会月(承認月)に応じた月割計算が適用されます。
大企業に比べて中小企業の年会費は低く抑えられていますが、この「中小企業割引」を適用してもらうためには、申請時に資本金や従業員数を証明する資料(履歴事項全部証明書や直近の決算書、労働保険概算申告書の写しなど)を正しく添付する必要があります。不備があると割引が適用されない恐れもあるため、事前の正確な確認が欠かせません。
また、所属する事業所の産業が「繊維工業」「印刷・同関連業」「こん包業」に該当する場合は、さらに以下のような業界特有の上乗せ要件(措置)を満たさなければ、特定技能外国人を雇うことができません。
雇い入れる外国人本人にも、一定の「技能水準」と「日本語能力水準」が求められます。これらを証明するには、大きく分けて2つのルートがあります。
日本国内や海外現地で実施される「製造分野特定技能1号評価試験」の希望する業務区分(試験区分)に合格し、かつ「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPTのN4以上)」に合格するルートです。これにより、現場の即戦力として最低限の知識や経験、会話力があることが法的に証明されます。
現在、多くの企業様が活用されているのが、技能実習生からの在留資格切り替えです。製造業分野に関する「第2号技能実習(または3号)」を良好に修了した外国人は、技能試験と日本語試験の双方が全面的に免除され、無試験で特定技能1号へ移行することができます。
技能実習から特定技能へ無試験で移行する場合、「実習で修得した職種・作業」と「特定技能で従事する業務区分」との間に、技能の根幹部分での関連性(対応関係)が必要になります。以下はその代表例です。
| 特定技能の業務区分 | 試験免除となる主な技能実習2号の職種・作業(例) |
|---|---|
| 機械金属加工 | 鋳造(鋳鉄鋳物鋳造など)、鍛造、ダイカスト、機械加工(普通旋盤・マシニングセンタなど)、金属プレス加工、鉄工(構造物鉄工作業など)、工場板金、仕上げ(金型仕上げなど)、プラスチック成形(射出成形など)、溶接(半自動溶接など) |
| 電気電子機器組立て | 電子機器組立て、電気機器組立て(回転電機組立て・配電盤制御盤組立てなど)、プリント配線板製造 |
| 金属表面処理 | めっき(電気めっき・溶融亜鉛めっき)、アルミニウム陽極酸化処理 |
★ 行政書士の現場リアルアドバイス
技能実習生から特定技能へ移行してもらう際、多くの企業様が「本人や監理団体から『良好に修了した』と聞いているから大丈夫だろう」と安心しがちです。しかし、いざ入管への申請段階になって書類を細かく精査すると、必要な要件を満たしていなかったという実務上のトラブルが後を絶ちません。技能実習ルートでの移行には、単に在留していた期間だけでなく、「技能実習を2年10か月以上修了していること」、そして「技能検定3級(または技能実習評価試験の専門級)の実技試験の合格証明書」、あるいは合格していない場合は客観的に評価された「評価調書」が必須となります。聞いた情報だけに頼らず、必ず事前に本人の合格証や実習修了証などの原本・書類を自社の目で直接確認することが大事です。
なお、仮に工業製品製造分野以外の職種(例:農業や建設、食品など)の技能実習2号を良好に修了した外国人の場合でも、「日常会話レベルの日本語能力がある」とみなされるため、日本語試験のみが免除されます。この場合、別途「製造分野特定技能1号評価試験」の該当区分にさえ合格すれば、工業製品製造分野での雇用が可能になります。
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特定技能外国人の採用手続きは、JAIMへの申請、入管への在留資格申請、事前の生活支援準備など多岐にわたるため、計画的に進める必要があります。
★ 行政書士の現場リアルアドバイス
JAIM(工業製品製造技能人材機構)への入会手続きは、公式マニュアルにもある通り、申請から完了までに「おおむね2〜3か月程度」の期間がかかる可能性があります。不備があればさらに伸びるリスクも。そして、このJAIMへの入会が完了し、ウェブサイトの賛助会員名簿に貴社名が掲載されなければ、次のステップである入国管理局へのビザ申請を一切行うことができません。そのため、「内定を出して、支援計画を作って、それからJAIMの申請をしよう……」と考えていると、就労開始時期が大幅に後ろ倒しになってしまいます。JAIMへの加入手続きは、採用が決定(内定・雇用契約締結)した段階で、他のどの手続きよりも早く、真っ先にスタートさせるのが実務上最大の成功のコツです。
JAIMの審査期間を見越し、超初期から並行して手続きを進める場合の理想的なフローは以下の通りです。不備がない場合でも、全体で概ね3〜4か月程度のリードタイムを見込んでおくと安全です。
【STEP 1】採用内定・特定技能雇用契約の締結
↓
【STEP 2】最優先:JAIMへの入会申請・製造品情報の登録・年会費支払(完了まで2〜3か月)
↓ (JAIMの審査結果を待つ間に、以下のSTEP 3・4を同時並行で進める)
【STEP 3】事前ガイダンスの実施・健康診断の受診
↓
【STEP 4】1号特定技能外国人支援計画の策定(自社または登録支援機関への委託)
↓
【STEP 5】JAIMの入会完了(名簿掲載)を確認後、出入国在留管理局へビザ(在留資格)申請
↓
【STEP 6】許可取得・就労開始!
JAIM申請時および出入国在留管理局への申請時に必要となる主な書類は以下の通りです。これらはほんの一部であり、企業の状況によって追加資料が求められます。
| 申請先 | 準備すべき主な必要書類(例) |
|---|---|
| JAIM入会時 | 賛助会員入会申請書、行動規範等に係る誓約書、履歴事項全部証明書(原本)、定款の写し、直近決算書の写し、中小企業であることを証明する資料(労働保険概算申告書など)、製造品の情報(所定テンプレート)、産業分類(日本標準産業分類)を証明する各種資料(確認票や補足説明書) |
| 地方出入国在留管理局 | 在留資格変更許可(または認定証明書交付)申請書、特定技能雇用契約書・雇用条件書の写し、給与払込誓約書、企業および外国人本人の住民税・国税の納税証明書、企業の決算書、JAIMの会員確認書類(名簿のウェブ画面写し)、外国人の技能試験・日本語試験の合格証明書(整理番号が記載された合格通知書など)、健康診断書 |
JAIMへの申請では、貴社がどの産業分類(日本標準産業分類)に該当するかによって、追加で提出すべき確認書類が細かく異なります。また、実際に工場で製造している具体的な製品の情報を所定のテンプレートに正しく記載して登録する必要があるため、技術的な仕様や出荷実績の事前確認が必須となります。
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特定技能のビザ申請は、産業分類の証明やJAIMの手続き、膨大な入管提出書類の作成など、企業の担当者様にとって非常に重い負担となります。書類に1箇所の不備があるだけで、審査が1〜2か月遅れることも珍しくありません。行政書士法人Luxentにご依頼いただければ、JAIM入会からビザ取得まで、面倒な手続きをすべて「丸投げ」でサポートいたします!
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実務上、企業の担当者様が専門知識のない状態ではまってしまいやすい、代表的な2つの落とし穴をご紹介します。
前述の通り、外国人に従事させる予定の作業が、企業の日本標準産業分類や本人の技能実習時代の職種と正確に合致していなければ、どれだけ熱心に「人手が足りなくて困っている」と訴えても、入管からビザは一発で不許可、あるいは何度も追加資料提出(理由書の提出など)を求められて審査がストップします。また、前職(技能実習の受入れ先など)から適切な「評価調書」や必要書類の回収がスムーズにいかず、申請が在留期限ギリギリになってしまうケースも多発しています。早め早めの書類精査と、実務経験に裏打ちされた法的なリカバリー対策が必要です。
特定技能1号の外国人を雇う場合、企業には生活オリエンテーションの実施、空港への送迎、適切な住居の確保サポート、定期的な面談の実施と入管への報告など、多岐にわたる「1号特定技能外国人支援計画」の適正な実施が法律で義務付けられています。これらを自社単独(自社支援)で行うには、社内に外国語対応ができるスタッフの配置や、複雑な入管法務の理解が必要となり、非常に高いハードルとなります。そのため、多くの企業様が「登録支援機関」へ支援の全部を委託していますが、信頼できる委託先選びも含めて、実務的なコストや負担をしっかりと想定しておく必要があります。
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